(1) レビュー
デザイン的な美しさは改めて述べるまでもありません。素晴らしく格好イイです。そして、何よりも驚くほど軽いです。キャスト時やパーミング時のフィット性は、本当によく考えて造形されていると思います。画像等では質感がわかり難いですが、素材的にまったく滑りません。また、使ってみてわかりましたが、少し水に濡れるとグリップ力が増してますます滑りにくくなります。ラバーのように素材がベタベタしないのも好みです。
一方、私自身はやや手が大きいので、握りの部分の径はもう少し太くてもよいかもと感じる時があります。ただ、現状で問題があるような太さではないので、平均的な手の大きさの方ならちょうどよいのかも知れません。また、ネジの部分は、完全に緩めてしまうと脱落します。この点はよくよく注意しておかないと、水中に落としてしまうと釣りにならなくなります。ゆめゆめ油断なきように(スペアの販売はあるようですが)。
(2) リールのセッティング
グリップがあまりにも軽いので、リールもある程度軽いほうが適しているよう思います。もちろんABUの5000番台クラスにも合いますし、デザイン的にはとてもハマります。
ただ、リールが丸型でそこそこ重いものだと、ロングキャストで力一杯に振り切った後に少しだけ「ブルン」と微妙に左右に振れる感覚が残ります。リールを軽いもの(ファイブやマグなど)にすると、この不安定感は完全に消えます。キャスティング精度に問題がでるようなものではありませんが、タックル全体が軽くなるだけに手元の重心の高さが気になるのかも知れません。
2500Cサイズやエッグシェイプのリールをセットすると、重心が下がってフィット感が向上することが期待されます。まだ試してみませんが、もしかすると4000番台クラスとの相性が良いのかも知れません。
(3) ブランクセッティング
本来、このグリップは固定式です。エポキシ樹脂等を使って、直接またはフェルールを介して接着するように設計されています。ですので、以下の方法は設計上の強度保証がある訳ではありません。個人的なカスタムビルディングとしての楽しみの範疇となります。
私自身は、これまで何十本もロッドビルディングの経験がありますし、毎年、ストーブシーズンには古いロッドのレストアにも取り組んでいます。普段から、いろいろなブランクをいろいろなグリップで試してみるのが好きなので、このグリップにもいろいろなブランクをあれこれ交代で取り付けています。
その方法ですが、水道管用のシールテープで径を合わせて差し込むだけです。ワインディングチェックは、ゴム製のものやホームセンターで売っているグロメットを取り付けています。
かなり固めに嵌め込むのですが、取れなくなる心配はしていません。昔からよく知られている「両脚を使って脱着する方法」を使えば、かなり固めに差し込んでもたいてい外すことができます。フライロッドでよく試されてきた方法で、ティムコさんのHPでも紹介されています。余談ですが、やってみると人間の脚の力は腕よりも相当強いことが実感できます。
なお、別のユーザーの方(ロードランナーさん)は、フジのGAコネットを加工して脱着式にしておられます。この方法もとても参考になります。
肝心の「どんなブランクが適しているか」については、私も試行錯誤中です。長めのロッドはひと通り試してみたので、今後は少し短めのものも試してみたいと思います。
(4) その他
古いリールのフットは個体個体で結構な差がありますので、リールとグリップ側のシートとのフイッティングが合わず、場合によってはグラグラしたり、使用中に外れたりすることがあります。これはリール側の問題なので、STTSグリップ以外のものでも同じようなことが起きます。私自身は、手持ちのほとんどのグリップのリールシートに1-3mm厚のラバーシートを両面テープで貼り付けています(たいていは1mm厚で大丈夫です)。フィリプソンやフジのグリップと同様に、このSTTSグリップにも同じようなシートを貼り付けています。ハイアーチフットや樹脂製フットのリールを使う場合は、特におすすめの対策方法です。
さて、私がこれまで一番長く使ってきたのはフィリプソンのアルミグリップやフェザーウェイトのチャンピオングリップで、いまでもこれらのグリップが一番の好みです。長年使い過ぎて、アクション時に支えの中心となる左の中指に「グリップだこ」ができているくらいです。これからもずっと愛用し続けると思います。
ただ、これらの重いグリップだけで終日釣りをするのはやはり手首や腕への負担が大きく、加齢もあってより軽いタックルへの依存度や関心が毎年高まっているのも事実です。今回、STTSグリップを入手して、釣りの楽しみの選択肢が格段に広がったことは間違いありません。この意味だけでも、購入して良かったと思っています。